ル・カネのガレット屋の看板犬。踏み台にしているのは私の脚。。。 |
ニース二日目。
8時に起き、宿のセルフサービスの朝食(シリアルとパン)を食べ、早々に宿を出る。
ル・カネへは、ニース中央駅で特急電車に乗り、カンヌで降り、そこからバスとのこと。ニース中央駅は、たくさんの観光客で賑わっていた。機械で切符を買おうとするも、コインかクレジットカードのみ。しかし、ICチップが付いているカードしか使えない!私のはついていないもの。うわーあんな長い列にと思いながら、切符を買う列に加わる。が、案外早く買えた。急がば回れとはこのことか。
往復券を買い、ホームへ入ろうとするが、どこにも切符を切る駅員がいない。もん嬢は、側にぽつんと立った、ちいさな機械の箱に切符を入れ、ビッという音とともに日付が印刷されるのを待つ。これがヨーロッパの切符きりらしい。これをしないで乗車したのが見つかった場合、罰金だとか。何のサインもないのに、これは知らなかったら分からんなあ、、、不親切だなあ。しかしこの後行ったドイツでも、同じようなシステムだった。日本やニューヨークでの常識が通じないことが、あるのだ。当たり前だけど、自分のやり方に慣れていると、つい忘れてしまう。こういうぶつかりは、「自分たちのやり方が共通のはず」という思い上がりに気付かせてくれるので、必要なのだと思う。
列車に乗って、発車を待つ。中継点のカンヌは、映画祭で有名なラグジュアリーな観光地。我々は通り過ぎるだけだが、せめて気分だけでも味わおうと、持参のサングラスをかけて、車内でセレブごっこ。写真を撮り合うアホなふたり。。
30分ほどでカンヌに到着。ル・カネへは、ここから出ている1番バスで行けるらしい。バス停で行き先を何度も確認していると、ほどなく1番バスがやってきた。バスは、とても新しく近代的で、ぴかぴかしていた。ル・カネは田舎だからと、勝手にぼろぼろのバスを想像していた私は、ちょっとだけがっかり。もう「田舎」なんて、幻想でしかないのかも。
バスは坂道を行き、20分ほどでボナール美術館の前に止まった。なんだかすごくあっさりと着いたので、狐につままれたよう。来たことが、まだ信じられない。しかしバスを降り、遠くに何度も見たボナールの絵にそっくりの建物(ボナール美術館)を見た時には、感動してじんと来てしまった。ついにここに。。。感無量だ。
お昼前ということと、すぐに目的地に行くのがもったいなく、何か食べようということに。バスの中から見かけた、人で一杯のちいさなパン屋に行ってみることにした。パン屋は本当にちいさいけれども、地元の人が列を作っていた。取りあえず並び、フランスパンを半分買ってみた。ここでは英語が通じず(田舎だ!)、半分くれ、というのを伝えるのに苦労する。身振り手振りで何とか買う。焼きたてを期待したが、冷めていた。特に何ということもないフランスパンだったが、良い思い出。もん嬢は、野菜のキッシュを買っていた。こちらは焼きたてだったこともあり、半分どろどろしていた。。
食べ終わって、念願のボナール美術館へ。楽しみだあ、わくわく!しかし、美術館の入り口に近づくにつれ、目を疑う私。。。そこには、なんと長〜い列が出来ているではないか!なんで!?
ボナールは有名な画家だが、ピカソやマチスに比べたら、一般の人の知名度は低い。そしてここは南フランスの片田舎。まさか入場制限がされているとは。。。!?並んでいるのは、年配の白人紳士淑女がほとんど。フランス人に混じり、英語で会話している人もいた。なぜにこんなに人気??ハテナが頭の中を飛び交う。
まさかの入場制限・ボナール美術館 |
しばらく並んだ後、やっと入場。入館料がかかるはず、なのに誰もチケットを買っていない。カウンターを素通りで、中へ入って行く。あれれ??無料なの??訳が分からないまま入館したが、後に理由が明らかに。この美術館は、特別展の期間中の最後の二日間だけ無料になるらしい。そして今日は展示期間の最後の二日間、つまり閉館期間に入る二日前だったらしい。なるほど、だからあんなに並んでいたのか。。。って、もう二日遅かったら、しばらくの間閉まっていたということか!危なかった!そして、なんともラッキーだ!!ありがとうボナール美術館!!
この美術館は、ボナールの生前の住居を改造したものであるのは知っていたが、予想していたよりもずっと小さかった。エスカレーター完備で、すごく近代的でキレイな建物だが、部屋や階段など、所々に昔の建物の面影が残る。5階建てで、展示スペースは、3、4、5階。2階はボナールの紹介ビデオを見せる映写室。1階はロビーと売店だ。
私は、最初に5階に上ったものの、もしや私の探している本「マティス・ボナール書簡集」が売店に売っているのでは!?と思いつき、急いで駆け下りて、探す。そして、やっぱりあった!!フランス語だが、、、。ニューヨークでも探していたが、見つけられなかった本だ。うう、これは頑張って辞書片手に読むしかない。とにかく買って、ロッカーに入れ、もう一度5階に戻る。
今回の展示は「ボナールとル・カネ」。ル・カネの風景画を中心にしたものだった。見たことがない油絵、素描、水彩、ドローイングの数々。何点か大きなものもあり、感動しつつ、メモを取りつつ、何度も往復する。大好きなボナールの鮮やかな色彩と構図で体がいっぱいにふくらんだようになるまで、見た。やっと満足し、ため息をつきながら1階に降りると、入り口のイスではもん嬢が待っていた。すまん、、、。
もう一度売店で、カタログとボナールのイラストレーション集などを買い、最後にもう一度展示スペースに戻って、五感ぜんぶを使い、絵をしっかりと体いっぱいに取り込む。ああ、来て良かったなあ。このためにフランスに来たようなものなのだ。欲しかった本も手に入ったし、大満足。1階に帰って、もん嬢にありがとうと言った。旅行中ずっと、スローな私と忍耐強く行動を共にしてくれたもん嬢には、今も心から感謝する。ありがとう、もんちゃん!
美術館を出て、坂道をぶらぶら上り、街の景観を楽しむ。白、オレンジ、濃い緑、包むような黄色。なんてのどかなんだろう。ペイネの壁画も見る。これはかなり痛んでいた。
小腹が減ったので、カラフルなカフェに入る。「グレープフルーツのロゼ」というサインがあり、ふたりとも注文。カフェのおじさん、喜んで、「これがおいしいのを知ってるのかい?」もん嬢「いいえ、知りませんけど」おじさん「じゃあおいしくて、また戻ってくることになるよ!」
グラスに入ってきたこのロゼは、今でも鮮明に思い出せるほど、ものすごく奇麗だった。ピンクともオレンジともつかない、夕暮れの雲を集めたみたいな、まるで夢みたいな色。グラスの水滴が曇りガラスのようにグラデーションをかけていて、我々はしばらくの間、ただほれぼれと見つめていた。一口飲んでみると、まさにグレープフルーツの味、しかし酸っぱすぎず甘すぎず、ちょうど良いバランスで、ほんとにほんとにおいしい。おじさんは正しかった。ふたりで感心しきり。
夢のロゼと、とろけるガレット |
ここはガレットという、そば粉で出来たクレープの専門店だったので、もん嬢はシンプルなバターのガレット、私は向こうに座っている人の食べていたものがおいしそうだったので、真似をして、卵のガレットを注文。茶色のクレープのようなものを四角く畳んで、その上にほぼ生の卵を乗せたものが出てきた。ニューヨークでは、食中毒のリスクがあるので、生卵は食べられない。久しぶりだね、と声をかけたい気分だった。日本を思い出す。なんだか新鮮な眺めだった。フォークとナイフで黄身を崩しながら食べのだが、黄身がとろっとしたソースになって、うま〜い。店の看板犬(ブログ冒頭を参照)がちょこちょこやってきては、愛嬌をふりまく。かわいいぃ!!しかしガレットをくれないと悟ると、さっさと他の客のところへ去っていった。正直な奴め。
ル・カネで、おいしいピンクのロゼを飲みながら、卵のガレットを食べている自分。。。犬パンチされながら。。。我が人生に悔いなし!
ロゼでちょっと良い気分になりながら、バスでル・カネを後にする。さようなら。また会う日が来るといいな。
ニースまでの電車は、、、眠かった!!
宿に戻り、ネットで近くの評判の良いレストランを探し、フランス初のコース料理を食べる。創作ニース料理とのこと。とても上品な味だった。フランスの料理屋は本当にどんな店でも外れがない、とこの時思ったのだが、今考えても、滞在中に(ムール貝を除いて)塩辛すぎるとか甘すぎるとか思ったことは一度もないのには驚く。パン屋でさえも。さすがフランス!やっぱりグルメな国だ。
帰りに海岸に寄り、夜の海を眺めて帰った。静かで透明な夜だった。
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